死別で生じる気持ちのつらさとセルフコンパッション

死別で生じる気持ちのつらさ

 大切な人との死別は、悲しみ、気分の落ち込み、絶望感、寂しさ、孤独感、怒り、罪悪感など、様々な感情を引き起こし、これらは「悲嘆反応」と呼ばれます。悲嘆反応は、多くの場合、自然に軽減していきますが、そのプロセスは山あり谷ありで、一見落ち着きを取り戻した方でも、何らかのきっかけ(故人の命日など)に悲しみに凌駕されることもあります。また、中には、亡くなった経緯や故人のことをいつまでも考え続けてしまい、孤独感や怒りなどの悲嘆反応が持続し、抑うつ症状を呈する方も一定数おられます。

 しかし、過去の調査では、心理的なサポートを必要とする方でも、わずか3.5%しか専門家に相談していないことが分かっています。また、気持ちのつらさが重症化の要因として、死別後の孤立など心理的なサポートが受けられない状況にあり、サポートの開始が遅れてしまうことなども挙げられています。よって、ご遺族が孤立することなく、適切な心理的サポートが受けられるように環境を整備することは、非常に重要な課題といえます。

セルフコンパッション

セルフコンパッションとは?

 セルフコンパッションとは「自分へのいたわり」をさし、辛い経験をしたからこその「あるがままの自分」を肯定的に受け入れられる心理状態のことで、「自分へのやさしさ」「共通の人間性」「マインドフルネス」の3要素から成り立ちます。
 過去の研究で、セルフコンパッションが高い状態にある人は、死別後の悲嘆が軽度であったことが報告されています。このことから、セルフコンパッションを高めることは、死別後の気持ちのつらさを軽減する効果が期待できます。

セルフコンパッション(自分へのいたわり)とは

● 自分へのやさしさ
自分へのやさしさとは、つらいことがあったときに自分を責めたりせず、自分にいたわりの心をもって接すること

● 共通の人間性
共通の人間性とは、つらいことは自分だけに起こっているのではなく、似た境遇にある人がいると知ること

● マインドフルネス
マインドフルネスとは、つらい出来事に心を揺さぶられるのではなく、「今」「目の前」のことに集中することと